イギリスの初期研修医制度

日英研修比較
こんにちは。日本では先日初期研修マッチングの第一回のオファーが出たみたいですね。私も今現在、こちらでの初期研修プログラムに応募している最中です。丁度良い機会なので、今日はイギリスの初期研修医制度についてご紹介していきます。

Contents

初期研修の仕組み
まず簡単に、イギリスの初期研修制度についてまとめていきます。日本では、最初の二年間を初期研修、その後のトレーニング期間を後期研修と呼びますね。
イギリスでの初期研修は実は日本とよく似ており、二年間行われます。Foundation Programme(FP)と呼ばれています。その後の後期研修はとても細かく段階分けされています。これについては、今後機会があればお話しします。
二年間のFPのうち、最初の一年をFoundation Year 1 (FY1)、次の二年をFoundation Year 2 (FY2)といいます。基本的には、4ヶ月ことに診療科をローテートし、合計6つの科を2年間でまわることになります (表1)。
X hospital (4 months x 3) Y hospital (4 months x 3)
FY1 General surgery General medicne Paediatrics FY2 Obs and Gynae GP Emergency medicine
一般外科 一般内科 小児科 産婦人科 GP 救急

表1:Foundation Programmeの一例

ここでポイントなのが、二年間のプログラムにおいて、最初の一年間は研修医・junior doctorには完全な医師免許が付与されていない事です。イギリスの医学部を卒業しただけでは、フルに臨床能力があるとは認められず、FY1を問題なく終了して、やっと完全な医師免許がもらえます。なので、イギリス外で医学部を卒業し、例えば日本の様に医師免許が医学部卒業時点で与えられた医師がイギリスで研修を始める際は、FY2からスタートということになります。
特別初期研修プログラムについて
イギリスの初期研修において特殊なのが、一般のFPと並んで、応募者の興味にあわせた特化型初期研修プログラムが存在することです。Academic Foundation Programme(AFP)、Foundation Priority Programme(FPP)、Psychiatry Foundation Fellowship (PFF)の3つがあります。
Academic Foundation Progamme
このプログラムは、名前の示す通り、アカデミックな分野に興味のある研修医向けにデザインされたものです。アカデミックと言っても、research(研究)、education(教育)、leadership & management(リーダーシップ及びマネージメント)の3分野があります。上でご説明したとおり、一般的なFPでは2年間で6つの科をローテートしますが、このプログラムでは、臨床に従事する代わりに、自分の興味のある分野での活動をする期間が一定期間与えられます。
例えば表2の様に、6ブロックのうちの1ブロックの4ヶ月間を研究活動に使えるように設計されています。
X hospital (4 months x 3) Y hospital (4 months x 2) + Research (4 months)
FY1 General surgery General medicne Paediatrics FY2 Obs and Gynae GP Research
一般外科 一般内科 小児科 産婦人科 GP 研究活動
表2:AFP一例①
また、固まった期間ではなく、F2の期間中の40%を特別活動に当てられる場合もあります (表3)。この際、F2は6ヶ月×2ブロックになることもあります。
X hospital (4 months x 3) Y hospital (4 months x 3) + Education
FY1 General surgery General medicne Paediatrics FY2 Obs and Gynae GP Emergency medicine
一般外科 一般内科 小児科 産婦人科 GP 救急
60%臨床+40%教育

表3:AFP一例②

臨床の知識をつけると共に、追加で活動をするのでハードではありますが、初期研修中から興味の幅を広げ、ネットワークを作り、研究や教育活動が始められるという点は、大いに魅力的です。ポスト数には限りがあり、面接やFPAS以外の点数も考慮されます。FPのマッチングとは少し異なったプロセスを踏むことになります。
Foundation Priority Programme
このプログラムは去年から導入されたものです。考え方としては簡単で、初期研修医が集まりにくい病院に人を配置するために作られました。給与アップや、一分野での追加でのトレーニング、資格取得のコースが得られるなどの特典がついてきます。
去年はワイト島でF2ができるFPPがあったらしいのですが、今年の募集ではそのポストがなくなってしまっていたようで、個人的に興味があったので残念です。マッチング制度はFPとは異なりますが、追加での選考基準や点数などはありません。
Psychiatry Foundation Fellowship
このプログラムは、精神科での集中的な研修が受けられることがポイントです。AFPの精神科バージョンといったところでしょうか。こちらも一般のFPとは違う選考プロセスを踏みます。
精神科に興味があるかどうかが問われ、在学中に行ったプロジェクト等が重視されます。このプログラムは、FP、AFP、FPPを管理しているHealth Education England(HEE)ではなく、Royal college of Psychiatrist によって管理されています。
まとめ
今回は、イギリスでの初期研修制度についてご紹介させていただきましたが、いかがだったでしょうか。書き起こしてみると、思ったより様々な種類があるのだな、ということを改めて実感しました。初期研修医の段階から、多様性に富んだトレーニングを選択できるのが、イギリスの研修システムの強みなのではないかなと感じました。
より詳しく研修内容について読んでみたい方は、こちらの公式ホームページを参考になると思います。
次回は、具体的なマッチングシステムについて、お話ししたいと思います。

コメント

  1. 医学生 より:

    こんにちは。2024年8月に2週間イギリスに海外研修に参加する日本の医学生です。イギリスにおける医学教育について調査を行いたいと考えており、検索をしていたらこちらのサイトに飛びコメントさせていただきました。もしよろしければ詳しくお話を聞くことは可能でしょうか。

    • ankozato より:

      コメントありがとうございます。はい、メールにてご連絡大丈夫でしたらコンタクトさせて頂きます。

タイトルとURLをコピーしました