前回はイギリスの初期研修医制度について色々なコースがあるよ、ということをお伝えしました。今回は、実際にどのようなプロセスでマッチングが行われるかについてです。
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初期研修マッチングについて
Foundation postのマッチングは、オンラインプラットフォーム(Oriel)を通して行います。出身大学がどこの国であるかに関係なく、同じシステムが使われます。
イギリスの医学部最終学年ですと、10月後半から11月前半までの2週間の期間にアプリケーションを提出することになります。まずこの段階では、全国20ほどあるdeaneryと呼ばれる研修学区を、自分の行きたい順にランキングします。
ランキング後、医学生がそれぞれが持っている「FPASポイント」が希望deaneryのカットオフに届いていれば、希望のdearneryにマッチングします。これが第一段階です。応募者が各deaneryに振り分けられたら第2選考です。この前に、deanery内でまた細かな地域わけがされ、先ほどと同じプロセスを踏むこともありますが、このステップがdeaneryによってはないこともあります(1.5次選考)。
第二選考では、基本的にそれぞれの病院でのローテーションが一つ一つ表示され、それをすべて応募者がランキングし、またFPAS順にランキングされます。この結果が発表され、晴れてマッチング終了となります (図1)。
図1:一般的マッチングプロセス
FPASポイントとは
上で出てきたFPASポイントについてです。これはいわゆる応募者をランク付けするための点数であり、これが平均より高ければ高いほど、希望のポストにマッチする可能性が高くなります。
FPASポイントは、50%がEducational Performance Measure (EPM)、50%がSituational Judgement Test (SJT)と呼ばれる総合適性試験の点数から計算されます(図2)。
図2:FPASポイント
EPMは、いわゆる学術的業績をしめします。学校での総合的な成績と、その他論文発表や医学部以外の学位を合計したものです。50点が最高点である、そのうち43点は学校でのdecileとよばれる成績のランキング、残り5点はその他の学位、2点が論文発表です。普通に医学部に通っているだけでは、この追加の7点を取ることはなかなかハードルが高いのですが、医学部在学中にintercalation yearと呼ばれる、一年で追加のBSc(学資)を選択すると、このうちの何点かは割と容易に取得できる事もあります(intercalationについては、また今後記事にします)。
SJTは、医学部最終学年生が統一的に受けるいわゆる適正テストです。この試験は、普通の医学知識は一切問われません。医師として働き始めるに当たり、様々な状況でプロフェッショナルとして倫理的・合理的な判断ができるかを評価するのが目的です。「予習不可能なテスト」と表現される事も多く、成績優秀な生徒が必ず高得点をとるとは限りません。この点数が、FPASの半分を閉めるため、成績がよくてもSJTを失敗してしまい、マッチングで不利になるというようなケースもあります。
特別初期研修プログラムマッチング
前回出てきた、AFP、FPP、PFFは、上の項目でご説明したプロセスとは少し異なった手順を踏みます。
タイムライン
特別プログラムにマッチしなかった応募者は、自動的に基本のFPプログラムに合流します。そのため、FPの応募を出した後に、特別プログラムに追加応募することになります。一般のFPのマッチングが終了するのは4月頃ですが、特別プログラムはこれが数ヶ月早く行われます。そこで落ちた応募者が一般プロセスに合流できるようにするためです。
点数付け
特別プログラムではFPPを除き、上記のFPASスコアをマッチングの判断材料として使用しません。AFPでは、decile(学校でのランキング)+AUoA score を使用します。AUoAとは、先ほどのEPMの追加7点の比重をより大きくしたもの、と考えられます。論文発表の比重が、EPMでは2点だったところの上限が10になり、論文発表以外にも、国際学会でのプレゼンテーションやポスター発表、在学中にとった賞なども計算に入れられます。より学術的パフォーマンスを重視した点数付けになっていると考えられます。
AFPのもう一つの書類選考過程として、white space questionというものがあります。Oriel上で、数個の問いに対し、200字ほどで回答します。質問内容としては、”What is the advantage of joining this programme for you?”など、応募者の意欲や過去の経験を問う者となっており、短めのPR文と似ているかもしれません。
FPPは、精神科に特化した研修プログラムですので、在学中に精神科に関わる研究活動や選択科目などが応募の際に審査されます。これもまた特殊な応募方法があるのですが、私自身が応募していないため、あまり良く分かりません。
面接
書類審査でショートリストされた後、AFP、PFFでは、基本的に面接審査があります。過去の経験や志望動機を聞かれます。また、普通の研修よりも臨床に従事できる期間が短いため、シナリオを用いて現段階で十分な臨床知識が身についているかを問われる事もあります。
まとめ
初期研修プログラムのマッチングについてまとめていきましたが、いかがだったでしょうか。日本との大きな違いとして、何段階にも分かれた点数システムがあることが大きな違いではないかと思いました。また、SJTという、職業態度を純粋に審査するテストが、基本マッチングの半分の比重を占めるのも、特徴的であると思います。
今回触れた、SJTやintercalationについては、また今後記事にしていきたいと思います。
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