新たな試みとして、日本とイギリスの医学部の比較シリーズをやっていきたいと思います。第一回目は、大学での部活動についてです。
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部活経験なし
驚くべき話ですが、私は小学校での短時間の「クラブ活動」以来、部活動というものをしたことがありません。渡英後は日本人学校に通い、その後現地の高校に進学しましたが、色々な事情も重なり、計画された課外活動をしたことはありませんでした。そのせいか、部活動は私にとってかなり未知の世界でもあります。
そんな私から見た、イギリスと日本の医学部における部活動の存在について、書いていきたいと思います。また、このトピック関しては、主観的で断片的な感想と経験でしか語れていませんので、何かご意見があれば是非聞いてみたいです。
中等教育での部活
高校からの違いからしかはっきりとは分かりませんが、日本における中等教育の中での部活動は、必須とは定義されていないまでも、加入することが基本にあるように感じられます。全国的な部活動をベースにしての大会やイベントも、より一般的であると思います。
対してイギリスの中等教育における部活動は極めて選択的であり、例えば何か一つの競技に長年打ち込んでいる生徒が、個別にクラブに通ったり、学校で行われている部活動でも少人数で行われる事が多いと感じました。また、より競争率の高い私立校やグラマースクール(進学校)で、学術的な側面以外を育てる目的で推奨される事があるようですが、私の通っていた公立校では、部活動をしていない生徒の方が多かったと記憶しています。この点では、大学に入る以前の部活動の立ち位置は、大きな差があると思われます。
必須度
今述べたように、二国間で一番目に頭に浮かぶ違いが、部活に入ることの当然度についてです。医学部に入学してからも、部活動が必須であるかどうかの前提は、受け継がれている様に感じられます。友人知人を通してしか日本の医学部における部活動の立ち位置は分かりませんが、基本的には入学時に所属するものという認識が一般的なのではないでしょうか。
対してイギリスでの扱いについて考えてみると、どこか一つに所属するという意識はそれほど高くない様に思われます。練習や大会が関わるスポーツクラブについては、長年所属する生徒もいますが、基本的には自分の興味のあるクラブに複数所属し、社交の場を増やすために加入する意味合いが強いです。そのため、部活に積極的な生徒と消極的な生徒に二分化される様に思います。
卒業後の扱い
日本での病院見学を複数経験してとても印象に残ったのが、部活動に関しての質問や話題が、病院見学においても非常に大きなウェイトを占めることです。見学応募フォームに部活動を記入する欄があったり、見学中に先生方とお話するとほぼ必ず所属している部活は何か、という質問をされます。大学を卒業するまでの課外活動としてだけではなく、卒後のアイデンティティーにも関わってくるという風に考えられます。
イギリスでの実習中に、研修医の先生方と世間話をする機会はたまにありますが、部活動が何かという質問をされたことは今までにありませんでした。また、論文や学会での発表を研修医マッチングの際に記述する欄はありますが、部活動経験が大きく注目される場面は基本的にはありません。
部活動について個人的見解
医学部での部活動のあり方に対してまとめる中で感じたのが、高校までの教育文化が非常に密接に関わっているという点です。
そして、部活動文化がより根付いている日本において、医師間のある種の共通言語としての役割を部活動が担っているのではという考えが今回形にできたと思います。当初はなんでだろう、と疑問に感じましたが、同様に医学部を経験した者同士でシェアできる概念として部活が登場するのは、当たり前のことなのだと思います。
その点、イギリスの医師同士で共通の話題を指定しなさい、と聞かれてもピンとくるものはすぐには浮かびません。この点において、すぐに共通理解が進む部活の存在は、とても有意義なのではないでしょうか。部活以外にも、研究や留学を優先したいといった意見もあると思いますが、やはり6年間所属する場所があるというのは良いものだと感じます。
自分の選択を後悔するわけではありませんが、もしも、もう一回医学部入学時に戻れるとしたら、部活に所属し、違った体験をするのもいいな、と思いました。
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